ウラPlay News 番外編  〜AMP「白鳥の湖」日記〜
このページは個人的な覚え書きです。舞台の感想についてはその日の体調や個人的感情によって著しく左右されております。間違っても劇評なんて高尚なモノを書いてるつもりは毛頭ございませんのでご了承下さい。

*ほぼ敬称略*


Top

Play News
Side B



AMP
「Swan Lake」
Index
03.02.26.S
03.03.09.M
03.03.25.S
03.03.27.S
03.03.28.M
03.03.28.S
03.04.03.M
03.04.05.M
03.04.05.S
03.04.06.M
03.04.06.S
Diary

Date:2003.03.28.
▼待ちに待った首藤康之氏の出演日。これでトリプルキャストをすべて制覇したぞー、とウキウキしながら客席へ。夜の回は24列から観劇。見慣れた一幕が終わり、いよいよ二幕。首藤さんの白鳥は、シャープで動きが細かい。というか、まるでまったく別の振付を観ているようだ! 腕の動きが、ほかのふたりに比べるとすごく雄弁。アダムやジーザスがひとつの動きをしている時に、首藤さんは同じ振付のところにみっつくらいの動きを入れてる感じ(←あくまで印象として、だけど)。ただ、アダムのようなカリスマ性があるわけでもなく、ジーザスのようなダイナミックさがあるわけでもない。だから、正直最初は「……白鳥に見えない」と思っていたのだ。白鳥の群の中に間違って紛れてしまった「みにくいあひるの子」ならぬ、「みにくい白鳥の子」に見えるなぁ、と(←「みにくい」という意味ではなく、別の種類の鳥が紛れてるという意味)。なので、二幕が終わって休憩に入った時点では、「首藤さんの動きは確かにすごいんだけど、“白鳥”としては、やっぱりアダムのほうがいいなぁ」なんて思っていた、正直なところ。

しかし、後半。ストレンジャーとして踊っている首藤さんを観ているうちに、今まで「こうだ」と思っていたAMP版「白鳥の湖」とは、まったく別の設定、まったく別のストーリーが見えてきた。アダムのストレンジャーは、『魔性の魅力で各国の王女を魅了し、しまいには女王までたらしこんでしまう罪な男』だった。しかし、首藤ストレンジャーは、あまり女をたぶらかそうとしてるように見えない。はっきり言って、女性に興味がなさそうだ。というか、むしろ『各国の王女が競って、女に興味のないストレンジャーを誘惑しようとしている』ように見えるのだ。ここでふと私の頭に浮かんだストーリーはこう。

『各国の王女たちは、おカタい東洋人のストレンジャーを誘惑するゲームをしている。もちろん、最終的には主賓である王女が彼を手に入れて終わる出来レース(だとすると、ストレンジャーは舞踏会に招かれた東洋の国の王子といったところか)。ストレンジャーは女たちのオモチャにされていることに気づいているけれど、そんな彼女たちを内心で侮蔑しながらも、そのゲームにつきあっている』……という情景に見えてきたのだ、あの3幕が! さらに物語はこう展開する。

『東洋人であることで軽蔑的・差別的とも言える扱いをうけつつも、自らの誇りは失わず、逆に女たちを見下しているストレンジャー。その孤独さに共感を、崇高さに憧れを抱いた王子は、思わず女王の手からストレンジャーを奪い取って踊り始める。最初は相手にしていたストレンジャーだったけれど、王子が抱いた“共感”に嫌悪感を抱きはじめる。「お前が抱いているような生ぬるい絶望を、俺の状況と一緒にするな」……哀れみや同情を拒む心と、心の弱さに対する同族嫌悪から、ストレンジャーは王子に対して攻撃的な表情を見せる。ストレンジャーから拒まれてショックを受けながらも、彼の気持ちを理解した王子は、この茶番劇を作り上げた女王に銃を向ける……』

えっ、三幕ってこんな話になってしまうんだ! と、この時点でもうかなり興奮している私(もうこのさい多少の矛盾は無視だ!)。そして、ストレンジャーの抱える圧倒的な孤独の前に、思わず泣きそうになってしまった。ライティングが変わって王子とストレンジャーがふたりで踊るシーン(このシーンは、今までストレンジャー=白鳥への王子の思慕が見せる妄想だと思っていた)、これが『ストレンジャーが自分の内面の孤独と向き合い、やがてその自分の弱さを憎み始める』という場面に見えてくる。『それまでずっと作り笑顔を見せていたのに、生々しい怒りをむき出しにして、自分の弱さを退けようとするストレンジャー。そして、そんな自分の弱さをあざ笑うかのように、自分が道化役であることを理解しながら、わざわざ女王と楽しそうに踊って見せる……こんな程度のことでは、自分の誇りは傷ついたりしない。そう言って強がってみせるように……』

このストレンジャーの姿は、そのままそっくり二幕の白鳥の姿と重なるのだ。そう、やっぱり二幕に登場する首藤スワンは白鳥ではなく、なんらかの間違いで白鳥の群の中で白鳥と一緒に育ってしまった別の種類の鳥だったんだ、と。
『大柄で力も強くて攻撃的な白鳥の兄弟たち(=欧米人)の中で、その機敏な動きと素早さでどうにかこうにか生き残ってきた一匹の小柄な鳥(=東洋人)』
たったひとりの異端の存在は、いつだって迫害や差別の対象になる……そんな背景のもと、四幕が始まると、そこに現れるのは体中が傷ついた鳥。
『ついに白鳥でないことがバレてしまい、主人公の鳥は異端の者を敵視する白鳥たちによって攻撃されてしまう。そして彼は、凶暴な白鳥たちのエサになる。主人公の鳥は、克服できなかった自分の弱さ(=王子の姿)を抱きしめて、死んでいく……』

孤独を抱えた王子のエピソードは、きっと、この鳥の心象風景だったのだ。アダムの時は王子のコンプレックスや憧れを投影した心象風景が白鳥のシーンだと思っていたけれど、首藤スワンではこれがまったく反転して見えてしまって……。今まで王子の視点で描かれた物語だと思っていた話が、白鳥の視点で描かれた話に見えていた。ここまで別の話になってしまうなんて! リアルな場面と登場人物の心象風景までが入れ替わってしまうなんて! もう、この4幕の時点で、私の頭の中では『スワン=ストレンジャー=王子』で等しくイコールの存在になっていた。四幕の王子とスワンはお互いに自分の半身。あるいはスワンの肉体=首藤、スワンの精神=トム、と解釈してもいいのかな。だとすると、ラストではスワンと王子はお互いに、『自分自身が白鳥たちによって蝕まれていくところを、何も出来ずに傍観している』ということになる。痛い。痛すぎる。自分自身の肉体が攻撃されるよりも、自分の大切なモノや人が攻撃されるのを、何も出来ずに見ていなければいけないのは、ずっとずっとツラいことだ……。あまりの残酷さと壮絶な絶望感に、胸が締め付けられる。あんなに「痛い」舞台を観たのは初めてだ。

アダムの時は、救いは無いけど無いなりにロマンティックに見えたこの物語が、恋だ愛だというような次元より、もっと根深い絶望を含んだ話に見えてしまって、ほとんど「打ちのめされる」といってもいいくらいの哀しみに襲われた。もう、首藤スワンが可哀想で、痛ましくて、でもそんな憐れみや同情を拒絶するような孤高さや気高さが、なおさら哀しくて。こうやって思い出して書いてるだけでも涙が出そうになってしまう。

違う人間が演じれば多少は違った印象を受けるのはよくあることだけど……ここまで違った設定、違ったストーリー、そして違ったテーマに見えてしまうとは。驚きのあまり呆然、唖然。まさか、もうすでに5回も観た舞台で(DVDも含めたら10回以上は観てるはずなのに)こんなにも違う物語が見えてくることに衝撃を受けた。すごい! すごいよマシュー・ボーン! そしてすごいよ首藤さん! ああもう、私は今夜興奮で眠れそうにありません。

ちなみに、アダム白鳥&トム王子の時は正直、「王子はやっぱりベン・ライトがいいなぁー」なんて思っていたのだけど、首藤さんとのコンビで観るトムは意外によかった。というのは、私がうっかり上記のような解釈をしてしまったがために、「ダメーなまま大人になってしまったぼっちゃん」の風情がたいへん作品に似合っていたのだな。これはこれで意外な発見。それから上記三幕のシーンでは、執事役は『この舞踏会が茶番であることを前もってストレンジャー(=東洋の国の王子)に伝え、どうか気を悪くしないでくれと水面下で工作している外交上手な執事』だと勝手に思いこんだ。こんなとこにも細かいウラ設定が!?

そういえばこの日、ガールフレンド役は「トレイシー・ブラッドリース」とキャスト表に書かれていたけれど、直前になってフィオナ=マリー・チヴァースに変更になってしまった模様。何故? 他のキャストはWキャスト、トリプルキャストでもほぼ網羅できたというのに、ガールフレンド役だけがどうしてもフィオナしか観られない。フィオナ嬢かわいくて大好きだからいいんだけど、でも、残念。


▼2003.03.28昼のキャスト表
ザ・スワン/ザ・ストレンジャー:首藤康之
王子:トム・ワード
女王:エマ・スピアーズ
執事:スティーヴ・カーカム
ガールフレンド :フィオナ=マリー・チヴァース
幼年の王子 :ギャヴ・パーサンド

スワン:ギャヴ・パーサンド, ギャヴィン・カワード, キム・アムンドセン, サイモン・カレイスコス, ケヴィン・マスカット, サイモン・ハンフリー, ゲイリー・クラーク, ヘンドリック・ジャニュアリー, ニコラス・カフェツァキス, マイケル・バッド, ルーパート・トゥーキー, リチャード・クルト, ダミエン・スティーク, サイモン・ウィリアムス

アンサンブル :メリアム・ポーリアン, ルース・モス, ピア・ドライヴァー, ローリーン・ディルテイル, キャサリン・フラワーズ, オリアーダ, カースティ・シモンズ, トレイシー・ブラッドリース, デイヴィット・リース, ギャヴィン・カワード, キム・アムンドセン, サイモン・カレイスコス, ケヴィン・マスカット, サイモン・ハンフリー, ゲイリー・クラーク, ヘンドリック・ジャニュアリー, ニコラス・カフェツァキス, マイケル・バッド, ルーパート・トゥーキー, リチャード・クルト, ダミエン・スティーク, サイモン・ウィリアムス

































































































画像カウンター